若手プレイヤーの奮闘と挑戦 vol.13

スラムダンクが世を沸かせている。

2022年秋、映画公開のリリース

もちろん僕もそのリリースに心躍る1人だ。

その中でもう1つ…スラムダンクの名の付く活動がある。

スラムダンク奨学金

https://youtu.be/7koj4iAx7Ko

公式サイトはコチラ

http://slamdunk-sc.shueisha.co.jp

残念ながら、コロナウイルスの影響で14期は選考中止、15期は募集停止となった。

2021年度に関しては決まり次第リリースが行われる予定になっている。

スラムダンク奨学金という活動がこれからも続いてほしい。

何かを言える立場ではないが、個人的にそう感じている。

何より、必ずその物語には続きが描かれる。

その続きを、今この瞬間に描き出しているこれまでの奨学生達がいる。

今回は僕が関わりを持たせてもらっているスラムダンク奨学金生達が描く、14ヶ月のスラムダンク奨学金のその後…

今、大きく動き出している彼らのストーリーを少し綴っていきたい。

バスケットボールで培った全てをかけて

2021年2月18日の朝。

僕はほぼ人のいない羽田空港にいた。

その日は8期生の猪狩渉が渡米する日だった。

コロナウイルスの影響で国外への行き来がほとんど行われていない中、猪狩渉はアメリカ独立リーグABAのシカゴ・フーリーと契約が決まった。

それまでも積もる話は山ほどあるが、搭乗までの僅かな時間で多くのことを話した。

彼が語ったのは、アンダーサイズの選手の可能性であり、その道を自分が作るという覚悟。そして、珍しくほんの少しだけ未来への不安を口にした。

猪狩渉と付き合いが長いわけではないが、彼の口から「不安」が溢れたことに驚きと同時に、僕はどこかでホッとした。

このご時世、どんな人だって不安に思うことがある。

ましてや彼だって普通の24歳(当時)の青年である。

その中で、これまで様々なものを犠牲にしてバスケットボールにかけてきた。

それは自分のために、応援してくれる人のために、そして自分の後を続くスラムダンク奨学金、海外に挑戦する後輩達のために。

ただ、彼はきっとわかっていた。年齢的にもこれがラストチャンスだということを。

24歳はスポーツ界では決して若くない。

NBAで活躍する八村塁は彼の1つ下の23歳であり、オリンピックで日本を沸かせたスロベニアのルカ・ドンチッチは22歳だ。

日本で言えば、大学を卒業して2年目。若手と言われるプレイヤーも、世界に目を向ければ、トップリーグで、チームの中心として活躍している。

猪狩渉が日本でプレーを続けていれば、きっとそれなりのスタッツは残していたはずだ。

けれど、それでは彼の「NBA」という夢に近づくことはない。

語弊を恐れずに言えば、彼は夢を選んだ。

何が良い、何が悪いの話ではない。それを選ぶ権利はいつも自分の心の中にある。

それは猪狩渉がその生き様を通じて、僕に教えてくれたことでもある。

僕はその生き様に魅了された1人だ。

ずっと、そうなりたかった自分が心のどこかにいた。

その後、猪狩渉は一時帰国し、次はシカゴ・フーリーでOBAというリーグに参戦し、リーグ制覇に貢献。リーグ推薦でOBAのオールスターにも選出された。

間違いなく彼は進化し、アメリカで通用している。

日本でフィジカルトレーニングに注力し、サイズアップを図った。ABAやOBAの試合に出場し続けることで、屈強な外国人相手にもコンタクトで負けず、対等にプレーできることを証明している。

もちろん、そこには打ちのめされる現実もある。

絶対的な違いを突きつけられることもある。

それでも可能性を信じるのは、自分が自分を信じられないとどんな扉も開くことはできないからだろう。

何よりそれだけの努力を積み上げてきた自負が彼にはある。

そして、猪狩渉は次のステップに向かう。

僕はそんな彼を日本から応援したい。

そういえば、空港で話した時に、彼の親友であり、高校の同級生である長谷川暢のダブドリvol.11のインタビューの話もした。

「めちゃめちゃいいです!宮本さん、本当にありがとうございます。」

と何度も言ってくれた。

彼は本当に他人想いの素晴らしい人間なのだ。

だからこそ、あえてその親友と同じ言葉を送りたい。

必勝不敗~大好きなバスケットボールで培った全てをかけて~】

あとはもう信じた道を進むだけ。

http://seidoku.shueisha.co.jp/2010/read05.html

己の存在価値を示すとき

スラムダンク奨学金の選手には挑戦の場所を日本に移した選手もいる。

12期生の木村圭吾は新潟アルビレックスBBとの契約を発表した。

Bリーグが誕生し、スラムダンク奨学金の選手が日本に帰国後、即B1のチームに所属することはなかったと記憶する。

そういう視点で、このスコアラーが新潟の地でどんなプレーを見せてくれるのかは非常に期待したい。

http://seidoku.shueisha.co.jp/2104/read05.html

そして、もう1人。

9期生の酒井達晶がB1の群馬クレイサンダーズにアシスタントコーチ兼ディベロップメントコーチに就任した。

選手ではなく、コーチとしての挑戦だ。

酒井達晶は今年3月にアキレス腱断裂の大怪我を負ってしまった。

僕自身もすごく後悔をした。

大学のシニアシーズンはコロナで試合を行うことができずに、久々に組まれた大学での試合に向かう直前の怪我。

酒井達晶の性格を考えると、何かしらの無理をしてでもチームを引っ張るだろうと思っていた。プラスして彼は大学でキャプテンを務めていた。

このキャプテンに関してもさらっと触れていることだが、異国の地で日本人がキャプテンを務めるというのはものすごいことである。

加えて、彼はコロナ禍でSNSでの発信にも力を入れていた。それもまた日本バスケや今後海外に挑戦を目指す選手のためという想いがあった。

悔やんでも仕方ないが、精力的に動く一方で、疲労やコンディションは大丈夫だろうか。

そう思っていたが、僕自身良い言葉をかけることができなかった。

大怪我を負っても酒井達晶は前を向き、今回の契約を勝ち取った。

群馬はベテランの五十嵐圭選手も加わり、マイケル・パーカーなどの仕事人もいる。今季から群馬を率いる名将コーチウィスマンからも彼が学ぶことは多いと思う。

怪我に関しては秋から冬には完治予定だ。

決して無理することなく、そして今シーズンの職務を全うして、B1の舞台でプレーヤーとしての酒井達晶の姿を見れる日を楽しみにしている。

http://seidoku.shueisha.co.jp/2006/read06.html

今、自分にできることをする。

11期生の小林良は大学3シーズン目を迎える。彼が通うブリッジポート大学はNCAAのディビジョン2に所属し、NCAAトーナメントを狙える強豪校である。(実際にコロナで中断前はNCAAトーナメント1回戦だった。

その中で、19-20シーズンは1年生の中で唯一ローテーション入りし、25試合に出場、平均7分のプレータイムを獲得した。

NBAを目指す彼はタイムリミットは25歳と決めている。そこから考えれば、今季はかなり重要な1年になると考えられる。

Bリーグのユースの活動も広がってきた中で、彼の活躍が今後のユース世代に与える影響は間違いなく大きい。ぜひ、今年1年の活躍に注目してほしい選手の1人だ。

http://seidoku.shueisha.co.jp/2012/read07.html

そして、B1の滋賀から地元であるB2の山形に移籍した7期生の村上駿斗がいる。

突然の移籍に驚いたのが率直な印象だ。

昨シーズンの村上駿斗の活躍はもっとピックアップされるべきものだったと思うし、自分自身もプレーを見に行くことができず、ピックアップすることもできなかったことを強く悔やんでいる。

昨シーズンの試合を決めたレバンガ北海道戦のコーナースリーは多くのファン・ブースターのハイライトとして焼き付いていることだろう。

間違いなく彼のプレーがB1で通用することを証明するシーズンだった。

それは今後、海外に挑戦し、Bリーグでの活躍を夢見る選手達の1つの指針になるに違いない。

今シーズン、舞台はB2なるが、昨シーズン山形はB2プレイオフに進出しており、メンバーを見てもB1チームと遜色はない。

ライコビッチヘッドコーチ体制の継続の中で、新加入の村上駿斗がチームに何をもたらすかは、昇格に必要なものとイコールでつながると考えられる。

個人的な想いを書くならば、もう一度B1の舞台で村上駿斗が見たい。

そして、それだけの戦力が山形に揃っているとも言えることは、今シーズン、山形が注目チームの1つであることとイコールであると僕は感じている。

http://seidoku.shueisha.co.jp/2101/read05.html

ラストシーズンに向けた覚悟

彼の言葉に驚いた。

「今シーズンはNESCACファーストチームとNCAAトーナメント出場目指しますよ。」

そう語ったのは10期生の鍵冨太雅だ。

NESCACとは鍵冨太雅が所属するボウディンカレッジなどが所属するニューイングランド地方の小規模大学11校からなるリーグを指す。いずれも名門大学であり、まさに文武両道と言える。(彼の通うボウディンカレッジは勉学もトップレベル)

アメリカの大学はD1からD3に分けられているが、それは大学の規模の大きさで分けられていて、部活の強さではない。その中で、このNESCACはスポーツのレベルも非常に高いことで有名だ。

あまり知られていないが、鍵冨太雅はそのようなハイレベルな環境で日々、勉強とバスケットボールに向き合っている。

また帰国時もインターンなどで、社会経験を得て、自身を磨くことを忘れない。

そんな鍵冨太雅が集英社の「青春と読書」にて、昔から面識のある宮地陽子さんだからこそ見せた悩み、一面がまとめられたが、皆さんにはどのように映っただろうか?

http://seidoku.shueisha.co.jp/2008/read06.html

僕がいうことでもないが、勘違いしてほしくないのは、彼は誰よりも努力を続けてきたということだ。

その努力の成果は多くの可能性を作り出し、その選択肢の多さに彼は悩んできた。

どれが自分らしい道なのか。

それは会うたびに、僕にも何度も話を聞かせてくれた彼の悩みだった。

人はそれを羨ましいと思うかもしれない。

けれど、それは違うと改めて伝えたい。

彼が必死に努力をして、手にした多くの選択肢であり、その多くの選択肢に悩む普通の青年の1人であるということ。

そんな鍵冨太雅が先程の言葉を何気なく発した時、僕は本当に嬉しかった。

決してまだ、未来の答えを出したわけではないけれど、目標を定め、目の前のことに全力で取り組むことを決めた彼の表情は清々しかった。

もちろん今までも目の前のことを全力で向き合ってきたことに偽りはないが、どこかラストシーズンに向かう円熟味というか、覚悟のような印象を感じた。

コロナウイルスでバスケットボールができず、自身と向き合う時間が増えたことが彼の成長に拍車をかけたのだと思う。

また、U19で共に戦った八村塁やシェーファーアヴィー幸樹のオリンピックでの活躍も刺激になったようだ。

ボウディンカレッジは長年同校を率いたティム・ギルブライドの引退を発表し、新しいヘッドコーチにアレックス・ロイドを迎えた。

渡邊雄太も活躍したGリーグのメンフィス・ハッスルのアシスタントコーチを務め、以前にはサンアントニオ・スパーズの名将グレッグ・ポポビッチの元で仕事をした経験を持つ。

ボウディンカレッジのヘッドコーチの選び方が非常に面白く、大学がコーチ候補を選び、そのコーチ陣と実際にクラブの選手数人が面談をし、選考するとのことで、鍵冨太雅は実際にその面談を担当し、コーチ陣とさまざまな話をして、今回、選手達が希望したコーチであるアレックス・ロイドが就任することになった。

それも彼の心に火をつけた一つの要因になったのだと思う。

先日は越谷アルファーズのユースチームの練習に参加し、U18の選手達と共に練習を行った。

多くの選手が彼の言葉に耳を傾け、声をかける姿を見ても、彼の中で表現したいバスケットボールや伝えたい想いがたくさんある事を感じさせた。

繰り返しになるが、もちろんまだこれからの先のことを決めたわけでない。

それでも、今シーズン鍵冨太雅の進化を多くの方に見てほしい。

22歳。

覚悟を決め、目の前の景色が拓けた青年の描く未来が楽しみでしょうがない。

全てのことに人並み外れた努力を重ねてきたからこそ、

君はここからどんな存在にだってなれるはずだから。

過去の連載

若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.1
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.2
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.3
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.4
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.5
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.6
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.7
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.8
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.9
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.10
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.11
若手プレイヤーの奮闘と挑戦 No.12

各選手SNS

酒井達晶
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https://www.instagram.com/ta2basketball/

鍵冨太雅
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https://twitter.com/TKagitomi
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小林良
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https://www.instagram.com/ryokobayashi24/

木村圭吾
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猪狩渉
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https://www.instagram.com/wataru_4/

村上駿斗

Twitter
https://twitter.com/shunto21
Instagram
https://www.instagram.com/shun.217

長谷川暢ロングインタビュー掲載 ダブドリvol.11

オリンピック銀メダル、ベスト5 女子日本代表町田瑠唯ロングインタビュー掲載 ダブドリvol.8

Basketball and Life

挑戦は海外だけではない。Bリーグ仙台89ersのヘッドコーチである藤田弘輝氏が立ち上げた

「大学バスケチームに向けた高校生プレーヤーリストを持ったマッチングサイト」

コロナ禍の中でリクルートに困る大学やアピールしたい選手のバスケットボールマッチングサイトという現代の新しい取り組みである。

国内でも、海外でも多くの方が挑戦を応援してくれる環境が整っている。

ぜひ、ご興味ある方はエントリーを!  

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