目次
- 試合のあらすじ
- リミッターが外れる音
- キーワード「縦」
- カルチャーとHCの色
こんにちは、宮本です。B1第26節に宮本的好カードが行われました。
秋田vs滋賀
どっちも大好き。
バスケだけでなく、バスケを取り囲むブースターや地域の関わりも大好きで、激アツな両チーム。
今回はこの試合を見て感じたことを勝利した秋田目線で簡単に掘り下げていきたいと思います。
目次
試合のあらすじ
まずは、この試合のあらすじを。
いつも出しているスタッツをご覧ください。
基本的にオフェンスの効率は質の高いゲームだったと思います。
秋田はディフェンスからイージーバスケット、滋賀は晴山ケビンの3P。
その中で、秋田が前半からディフェンスで流れを掴み、滋賀は少しそのディフェンスを受けてしまった印象。
この前半の前半が試合を分けたポイントになったと思います。
また滋賀が外国籍ビッグマンが1人しかいないこともあり、秋田はマッチアップなどの部分もシンプルに当てることができたというニュアンスの前田HCのコメントもあった。
滋賀にとっては、ドライブーキックアウトからのスリーポイントなどを形とするが、そこには秋田はヘルプに行っても激しくクローズアウトに出てくるので、滋賀にとってはやりにくい相手かもしれない。
また、秋田はジョーダンハミルトンを気持ちよくプレーさせないようにしていたのが印象的で、滋賀もコーナーまでボールを運びたい中で、秋田が得意とする、ピックのディフェンスでブリッツ気味のヘッジディフェンスでのセパレートする形もはまっていた。
余談だが、明日の観戦は滋賀がそこにどうアジャストするか?が興味深い。
リミッターが外れる音
この試合印象的だったのが、秋田の大浦選手。
ここ数ヶ月?10試合くらい?どこか表情が冴えず、迷いを感じていた。
特にコールビーが負傷離脱してからは、自分の役割だったりに迷いがあったのではないかな?と思う。
シンプルにいえば、コールビーがいれば、リバウンドを取ってくれる。
それはショットを思いきり打てることにつながるので、セレクションに迷いがなくなる。
ディフェンスでは、抜かれたとしても、コールビーがいる方に導くなどの秋田のルールを守って入れば、ブロックショットに来てくれる。
おそらくコールビーの存在は、大浦選手を輝かせる必須の存在で、彼自身もそこに甘えではないけれど、最低限のことをすれば、それ以外に労力を回せたのだと思う。
けれど、そのコールビーが離脱し、展開も考えないといけない、PGとして構成も考えること、リバウンダーの不在は自身のショットの思い切りを迷わせたり、ディフェンスでも抜かれてはいけないから激しくいけないなどの難しさがあったはず。
前田HCも大浦選手に厳しいコメントを残した時があった。
それはもちろん期待の表れであり、むしろここでも何度か書いているが、彼が秋田CS出場、日本一のキーパーソンであることは間違いない。
CSに出ること、そして出た時に、トーナメントに向けたシーズンとは違う戦い方に彼の思い切りのいいオフェンスやPGとしてのサイズ大きさは間違いなくプラス。
期待は彼に取って重圧でもあったと思うが、今日はどこか大浦選手らしさと今まで以上のインテンシティー、コミュニケーションをとる姿があったように思う。
ダブドリvol.9で現三遠ネオフェニックスの山本柊輔選手のインタビューで「リミッターが外れる音」というワードがあった。
(vol.11は長谷川暢選手が出るので、皆さん買ってください。笑)
大浦選手もその「リミッターが外れる音」が聞こえそうなところまで来たような気がした試合だった。
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前節の大敗で覚悟が決まったのか、何か思うことがあったのか、HC、選手とコミュニケーションがあったのか。
1Qの残り4分54秒のディフェンスは鬼気迫る感じを感じた。
先ほど書いた秋田のブリッツ気味のディフェンス。
ここで滋賀がトラベリングをする。
その時の前田HCの喜び方も、「大浦それだよ。できるんだよ!」という気持ちを個人的に感じた。
2Qオフィシャルタイムアウト前には、自ら中山選手とディフェンスでのコミュニケーションをしていたし、そのタイムアウト後には、ススっとよってきた長谷川暢選手が大浦選手に何かアドバイスをしたようなシーンがあった。
そして、少し点差が離れた3Qには大浦選手を中心に、保岡選手、カーター選手、そして大浦選手より若手の王選手、渡部選手の5人の時に、ベンチからの「大浦、もう若手じゃないからな」というメッセージがバンバン伝わってきた。
そして、その後、多田選手も爆発するという。笑
秋田のすごいところはおそらくそれを全員が理解していることだ。
そして、全員がさりげなくそこにサポートをする。
多分そんな環境の中で、大浦選手は自分次第だということをより強く感じたのではないだろうか。
そう、ほんとに自分次第。どれだけ出場タイムがあっても、それを掴むのは自分次第なのだ。
近いうち、勝因は大浦!!そんな「リミッターが外れる音」が彼から聞こえそうな気がした。
キーワード「自信」と「縦」
そんな大浦選手に代わって、最近スタメンPGを務めるのが長谷川暢選手だ。
彼の適正は2番だと感じるし、今年の活躍を見れば、多くの人がそう感じると思う。
では、なぜ彼がPGを務めているのか?それが「自信」と「縦」だと思う。
2番ポジションで、縦にドライブをする魅力を思う存分見せてくれた長谷川選手。昨シーズンの彼を振り返るとPGとして、コントロールしようと、ボールを守りながら、ドリブルする印象が強い。
さっきの言葉を使えば、「長谷川暢のリミッターが外れた音」がしたのは昨シーズンの京都戦。
これも縦のアタックだった。
バスケットボールにおいて「縦」の重要性は強いし、彼の親友であるABA Chicago Furyの猪狩渉選手もよく縦の重要性について言及する。
この縦でアタックできることを知った長谷川暢選手が得た「自信」がPGとしても1段ステップアップをさせた印象がある。
昨年以上の落ち着きはいつでも縦にいける自信。
そして、ディフェンスからしても、縦にこられる恐怖はプレッシャーをかけにくくさせる。
そういう意味でこの40試合弱で得た「自信」と「縦」は彼のプレーをいい意味でそぎ落とし、表現が矛盾するが、幅を広げたのだと思う。
また、2番で出ることで、人に任せられる余裕もできて、試合中も中山選手にハンドラーを任せ、コーナーでステイする余裕も、2番での出場があったからこそなのかな?と感じた。
滋賀もこの「縦」がもっと加わったら、試合をひっくり返せたかもしれない。
そこに期待したいのは、個人的に村上駿斗選手。
オクテウスが縦にいけるからこそ、もう1人いいバランス、ボールムーブから縦に行くと、その怖さは倍増すると思う。
いいシューターがいるし、頓宮選手のスリーのアテンプトも増えてきたことを考えると、ペイントにはアンガスに広大なエリアが与えられるが、そこにうまくアタック&リプレイスが起こると滋賀のバスケットボールはやっぱり面白い。
そして、それができるのは村上駿斗選手だと思う。
そういう意味で、僕はやはり滋賀では村上駿斗選手に期待したいし、彼にもまだ「リミッターが外れる音」が聞こえる瞬間はやってくるはずだ。
カルチャーとHCの色
最後に、カルチャーとHCの色について書いていきたい。
先ほどの大浦選手だったり、長谷川選手だったりの起用の仕方や成長曲線のイメージはHCの色と言えると思う。
それは前田HCの2年目のテーマだったり、1年目を振り返った時の反省だったりが関係するのかもしれない。
僕もアマチュアレベルで10年ほどHCを務めてきたが、そこで1番重視したのが、
「どうすれば、このチームで1番本人らしく成長できるかどうか」
だった。
言葉にすると簡単だが、これは非常に難しい。(僕ができてた訳では全くない)
HCと選手は長い時間を共にするし、同じ組織で仕事をするからこそ、いい意味でリスペクトがお互いになくてはいけないし、プライベートでの理解も必要だと僕は思う。
バスケットボールでいいパフォーマンスをするためには、バスケットボール以外の不安を取り除くことも大切だし、そういう意味ではHCがコート内外でどんな表情でいるのか?なども大切だと思う。
秋田でいえば、いつも笑顔でいる前田HCが時に会見などで伝える厳しい言葉は、その本気度というか、信念が伝わるし、選手もきっとそう受け取っているのではないかと思う。そのあたりはHCの色だと思う。
組織での、様々な約束事やルールの最重要事項が何なのか?
それをより明確化するために伝え方が大切になると思う。
最近感じたのが、日本人はそれが下手だな…と。
話はかなりそれるが笑
アマチュアレベルのバスケでも、ピックアップゲームで周りの感情を無視してプレーする選手がよくいる。
残念ながら、そこで自己満足に走る人は、日常でもその傾向がある。
組織を強く、よりよくしていくためには、必ずどこかでルール生まれ、枠組みができ、そこの中で、選手は個性を発揮し、自由を与えられる。輝く場所を用意され、その場所で輝くために努力をするという双方のより良い関係性が重要だと思う。
選手はそれをしっかりと理解し、そこで求められることを発揮しながら、自己表現をするし、それがあるからこそ、それ以上のものが生まれる。経営でいうところの社長と従業員の悩みは全く違うが、その悩みが違うことを理解しながら、同じビジョンを持てることが重要なことを同じだと思うし、そこには常に乖離はあり続けることも理解する必要があるのかもしれない。
自由とはなんでもしていい
縛られない
ということではない。
けれど、日本バスケはその「自由」を求める選手が非常に多く、そこを伝えきれず、縛りすぎたり、ルールを曖昧にしてしまうコーチが多いのも事実だと思う。
そういう中で、秋田も滋賀もクラブ、HCが「何をしたいのか?」
クラブにはどんなルールがあり、どんなバスケットボールを表現したいのか?
文化、カルチャー
というものが明確であるところはすごく参考になるし、育成年代の選手たちに感じて欲しい。
前田HCは会見1つとっても、そのインパクトの与え方がすごく勉強になるし、起用を見てもチームルール、カルチャーの中で、選手のストーリーと成長曲線を考えているのだと感じる。
もちろんそれをやれば勝てるわけでもないし、さんざんな試合もある。
けれど、指針を掲げるHCがその軸をしっかりと持っていることで、選手たちも必ずどこかで成長の瞬間、しつこいがあえて使うのならば、「リミッターが外れる音」と聞こえる瞬間がやってくるのだと思う。
そういう意味では秋田の野本選手などもその1人かもしれないし、「秋田にとって若手選手が若手プレーしてはいけない。」というような言葉の意味がよく理解できる。(本日のHC会見でそのような言葉が出た)
そして、今日はそれを秋田、特に大浦選手が表現しようとしていたのではないか?と感じた。
秋田にとってのそれが、ディフェンスなのだと思う。
そんな見方をしてもバスケットボールは面白い。
明日、滋賀のデニスHCはどんなスタメンで、選手たちに声をかけるだろうか?
誰か1人でも躍動する選手が出てくれば、おそらくゲームはひっくり返る。
そしてそれが、滋賀のカルチャーを体現するものであれば、きっとより面白いゲームが見られると思う。
この2チームの魅力はそんなカルチャーやHCの色もある。
そんな、試合までの攻防も明日の楽しみにしたい。
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